「ヒロさん、おうちデートしましょう」
いろいろあって、つい。もっと野分と一緒に居たい、だなんて恥ずかしい本音を知られてしまった、あのクリスマスの夜。俺のぶちまけた全く理性的ではない文句の数々を嬉しいなどと受け止めた挙げ句、もっともっと俺の事を大切にする、と宣言した野分は、まさに有言実行。野分の言うところの「ベタベタ」をしたがってならなかったのだが、流石に頻繁過ぎてはたまらなかった。
あ、いや、もちろん、イヤだってわけじゃない。ただ、そういう時の野分は臆面もなく恋人モード全開といった感じで、どうしたってドキドキしてしまうのだ。歴だけは長い付き合いの中で、節度ある同居人として過ごしていた割合が、ウハウハパッションピンクなバカップルもかくや、と言わんばかりのいちゃいちゃっぷりにすっかり侵食されてしまっては、全く気が休まらないのも事実で。
そんなわけで、隙あらばベタベタいちゃいちゃしたがる野分と、オンオフの切り替えを付けたい俺とで協議の結果できたのがこの「おうちデート制」である。正直自分でもバカらしいなとは思ったものの、意外とこれはこれで悪くなかったりする。
なぜだか、こうしてはっきり野分に「デート」だと宣言されてしまうと、物わかりの良い同居人でも、余裕ある年上でもなく。ただ恋人と時間を一緒に過ごしたい、そう思う自分をちょっとだけ許せてしまうわけで。
ここのところ野分の多忙が続いていたこともあって、照れゆえの却下を突きつけることなど、できるはずもなく。
うん、と素直に頷いた俺の顔は本気で発火するんじゃないかと思うくらい火照っていたけれど、目の前でふにゃりと笑み崩れた野分の幸せそうな姿を見てしまえば、あとはもう。
本当に、心から大切なものを触るみたいに、野分の大きくて温かい掌に頬を包まれて、すっかり心も身体も野分に向かってとろけてしまう。でもいいんだ。今は、デート中なんだから。
俺は、野分のことを、…好き、なんだから…。
じわ、と胸の内に広がる熱っぽい多幸感を噛みしめつつ、正しく恋人同士の甘い時間に浸るべく、そっと瞳を閉じたのだった。