1126

『ちゃんとお世話しますから、連れて帰っても良いですか?』
 スマホの通知欄に表示されたアプリでのメッセージに首をかしげる。
 送信元は、本日病院の関係で都内某所に一泊での出張に出掛けていった野分だ。
 時計を見れば、既に時刻は22時を回っている。流石に夜も更けて、ホテルに引き上げた所だろうが。

 なんだ、お世話するから、って。
 まさか野分に限って、仕事先で犬猫かなにかを拾った、なんてことはないだろうが。
 首をかしげつつスマホを手に取ると、続いて
もう一通。今度は画像が送信されてきた。
 指紋認証でロックを解除し、アプリを起動してみれば、そこには。

 ホテルのユニットバスらしき場所に、黄色いアヒルがチョコンと鎮座している写真。
 それから、野分が本日宿泊しているホテルのものらしい『大切にお世話してくれる方は、ぜひ連れて帰って下さい』というメッセージだ。

 ホテルのサービスの一環にしてはユニークだ。
 浴室でのお出迎えに驚いた野分が、わざわざこんなメッセージを送ってくる、その可笑しさにうっかり唇が綻んで。

 いいよ、と二重丸のOKスタンプだけを返してスマホをソファの上に放り出した。
「俺も丸くなったもんだ」
 なんて独りごち、頭をかきながら向かう先は、先住アヒルの待つ、我が家の風呂場である。